最終更新:2026-01-15
概要
無知に訴える論証(むちにうったえるロンしょう、Argument from Ignorance / Ad Ignorantiam)は、「ある命題が偽であると証明されていないから、それは真である」あるいはその逆を主張する誤謬である。
Pが偽であるという証拠はない。 ∴ Pは真である。
「証拠の不在」は「不在の証拠」ではない。単に「まだ分かっていない」状態を、肯定的な根拠として扱ってはならない。
例と間違っている理由
例1:宇宙人や幽霊
「宇宙人がいないという証拠は見つかっていない。だから宇宙人は存在するんだ。」
間違っている理由:存在しないことを証明(悪魔の証明)するのは極めて困難である。未発見である事実は、存在の証明にはならない。単に「いるかいないか分からない」が正しい結論である。
例2:安全性
「この新成分が人体に害を与えるというデータは今のところない。だから安全だ。」
間違っている理由:害があるというデータがないのは、単に調査不足や検査期間が短いだけかもしれない。「危険性が証明されていない」ことと「安全性が証明された」ことはイコールではない。
例3:陰謀論
「政府が裏で操っているという説を否定できる証拠をお前は持っているのか? 持っていないなら、俺の説は正しい。」
間違っている理由:立証責任(Burden of Proof)を転嫁している。通常、肯定的な主張(「操っている」)をする側が証拠を提示する責任を負う。反証できないからといって、その説が正しいことにはならない。
対処法
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立証責任の所在を明確にする 「ある」と主張する側が証拠を出すべきであるという原則(ラッセルのティーポット)を確認する。
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「分からない」を許容する 現時点では真偽不明(保留)が最も科学的に誠実な態度であることを伝える。
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積極的な証拠を求める 「否定できないこと」ではなく「肯定できる根拠」を提示するよう求める。