最終更新:2026-01-15
概要
権威に訴える論証(けんいにうったえるロンしょう、Appeal to Authority / Ad Verecundiam)は、主張の根拠として専門知識や地位のある人物の発言を引用し、それだけで主張が真であると断定する誤謬である。
権威ある人物AがPと言っている。 ∴ Pは正しい。
専門家の意見は参考にはなるが、絶対的な真理ではない。特に、その人物の専門外の分野での発言や、証拠を伴わない発言を根拠にする場合にこの誤謬が生じる。
例と間違っている理由
例1:教授の直感
学生:「データによると、この反応条件では収率が下がっています。」 先輩:「でも教授が『この条件がベストだ』と言っていたぞ。教授が間違えるわけないだろう。お前の実験ミスだ。」
間違っている理由:教授であっても記憶違いや知識のアップデート不足はあり得る。実験データ(客観的事実)よりも人物の地位を優先させており、科学的な態度ではない。
例2:専門外の有名人
「ノーベル物理学賞を受賞した〇〇博士が、この健康食品はガンに効くと言っている。だから効果があるはずだ。」
間違っている理由:物理学の権威であっても、医学や栄養学の専門家ではない(ハロー効果)。専門外の分野においては、彼らの意見は素人の意見と同程度にしか扱われるべきではない。
例3:引用の乱用
「アインシュタインも『想像力は知識より重要だ』と言っている。だから勉強して知識を詰め込む必要はない。」
間違っている理由:名言を文脈から切り離して、自分の都合のいい主張(勉強したくない)の補強に使っている。アインシュタイン自身は膨大な知識を持った上でそう発言している。
対処法
-
「誰が」ではなく「何を」で判断する 発言者の名前を隠しても、その主張に説得力があるか考える。
-
根拠(エビデンス)を求める 「先生がそう言う根拠となる論文やデータはありますか?」と確認する。
-
専門領域を確認する その権威者が、本当にそのトピックの専門家であるかチェックする。その後、1.と2.を実践する。