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【Logic】自然に訴える論証の解説

最終更新:2026-01-15

概要#

自然に訴える論証(しぜんにうったえるロンしょう、Appeal to Nature)は、「自然なものは良い/正しい/安全であり、不自然(人工的)なものは悪い/間違っている/危険である」という前提に基づいて結論を導く誤謬である。

Xは自然由来である。 ∴ Xは良いものである。

自然界には毒キノコ、ウイルス、猛獣など人間にとって有害なものが多数存在する一方、人工的な医療や技術が多くの命を救っている。「自然=善」という図式は論理的に成立しない。


例と間違っている理由#

例1:食品添加物#

「このジュースは保存料を使っていない天然成分100%だから、絶対に身体に良い。」

間違っている理由:天然成分であっても、過剰摂取すれば毒になるもの(糖分、塩分、特定のアルカロイドなど)はある。逆に、安全性が確認され、腐敗(食中毒)を防ぐ保存料の方が、健康リスクを下げる場合もある。

例2:医療拒否#

「ワクチンは人工的にウイルスをいじるものだから危険だ。人間が本来持っている自然治癒力で治すべきだ。」

間違っている理由:自然治癒力では対抗できない感染症(天然痘、狂犬病など)に対して、人工的な介入(ワクチン)が有効であることは歴史的に証明されている。「人工だから危険」という短絡的な結びつきは科学的根拠を無視している。

例3:行動の正当化#

「弱肉強食は自然界の掟だ。だから強い者が弱い者を搾取しても倫理的に問題ない。」

間違っている理由:自然界で起きている現象(事実)を、そのまま人間の倫理規範(当為)に適用することはできない(自然主義的誤謬)。人間社会は、自然状態の残酷さを克服するために法や道徳を作ってきた側面がある。


対処法#

  1. 「自然な毒」を例示する 「トリカブトやフグの毒も100%天然ですが、安全と言えますか?」と問いかける。

  2. 定義の曖昧さを突く 「どこまでが自然で、どこからが人工ですか? あなたが着ている服や住んでいる家は自然ですか?」と、線引きの恣意性を指摘する。

  3. 個別の評価を求める 「自然か人工かというラベルではなく、実際の成分データや臨床結果で判断しましょう」と提案する。

【Logic】自然に訴える論証の解説
https://ss0832.github.io/posts/20260115_appeal_to_nature/
Author
ss0832
Published at
2026-01-15
License
CC BY-NC-SA 4.0