最終更新:2026-01-15
概要
論点のすり替え(燻製ニシンの虚偽、Red Herring)は、議論の最中に、本来のテーマとは無関係または関連性の薄い話題を意図的に投入し、相手の注意を逸らして不利な状況をごまかす誤謬である。
議論のテーマAが進行中。 人物Xが話題B(Aと無関係だが刺激的な話題)を投入。 議論がBに移行し、Aは忘れ去られる。
由来は、猟犬の訓練で燻製ニシン(強い臭い)を使って犬の嗅覚を惑わせたという逸話(あるいは逃亡者が犬を撒くために使った説)にある。
例と間違っている理由
例1:政治家の答弁
記者:「今回の汚職疑惑について、事実関係を説明してください。」 政治家:「それよりも重要なのは、我が国の経済成長です。株価は上昇しており、国民生活は豊かになっています。」
間違っている理由:経済状況が良好であることは、汚職の事実有無とは全く関係がない。耳障りの良い別の成果を強調することで、本来答えるべき不都合な問いから逃避している。
例2:家庭内の議論
夫:「頼んでおいた皿洗いをまだやっていないじゃないか。」 妻:「あなたこそ、去年の誕生日に何もくれなかったわよね。」
間違っている理由:現在の家事分担の問題と、過去のプレゼントの問題は別個の事案である。相手の過去の過ちを持ち出すことで、現在の自分の過失(皿洗いの未実施)をうやむやにしようとしている。
例3:環境問題
A:「プラスチックごみの削減にもっと取り組むべきだ。」 B:「でも、宇宙開発のゴミ(スペースデブリ)の方がもっと深刻な問題だとは思わないか?」
間違っている理由:スペースデブリが問題であることは事実かもしれないが、それがプラスチックごみ対策を否定する理由にはならない。「他にもっと悪いことがある」という主張(相対的欠乏の誤謬)を利用して、目の前の課題を無効化しようとしている。
対処法
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話題の逸脱を指摘する 「その話は興味深いですが、今はAについて話しています。Aに戻りましょう」と冷静に軌道修正する。
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関係性の証明を求める 「今の発言は、本題とどのような論理的つながりがありますか?」と問いかけ、無関係であることを自覚させる。
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感情的なトピックに食いつかない すり替えられた話題が挑発的であっても、それに反応してしまうと相手の思う壺であるため、無視して本題を繰り返す。