最終更新:2026-01-15
概要
お前だって論法(Tu Quoque / Whataboutism)は、指摘された問題点に対して反論するのではなく、「指摘した相手も同じことをしている(または別の悪いことをしている)」と言い返すことで、自分の正当性を主張しようとする誤謬である。対人論証の一種。
A:「あなたはXという不正をした。」 B:「そういうお前だってYをやっているじゃないか!」 (だから私のXは問題ない、あるいは議論する資格がお前にはない)
相手の偽善を指摘できたとしても、自分が不正(X)をした事実や、その悪質さが消えるわけではない。
例と間違っている理由
例1:遅刻の指摘
上司:「君、また遅刻か。社会人として自覚が足りないぞ。」 部下:「課長だって先週、二日酔いで遅刻したじゃないですか。」
間違っている理由:課長の遅刻が事実だとしても、部下の遅刻が正当化される(許される)わけではない。双方が悪いというだけで、部下の規律違反の事実は変わらない。
例2:国際政治(冷戦期の定番)
A国:「B国の人権弾圧は深刻だ。」 B国:「A国こそ、国内で人種差別問題を抱えているではないか。」
間違っている理由:A国の問題はA国の問題として批判されるべきだが、それによってB国の人権弾圧が免罪される論理的根拠はない。論点をずらして泥仕合に持ち込んでいるだけである。
例3:環境保護
「環境保護を訴えているグレタさんも、プラスチック製品を使っているじゃないか。言行不一致だ。」
間違っている理由:活動家の生活スタイルに矛盾があったとしても、「環境保護が必要である」という科学的な主張(CO2削減の必要性など)が誤りになるわけではない。
対処法
-
「2つの悪」を分ける 「私の問題は認めます。しかし、それによってあなたの問題が消えるわけではありません」と切り分ける。
-
Tu Quoque(トゥ・クォーク)であると指摘する 「それは『お前だって論法』です。私の行動の是非と、この議論の正しさは関係ありません」と返す。
-
議論の資格と内容を区別する 「確かに私に言う資格はないかもしれませんが、言っている内容自体は正しいですよね?」と問う。