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量子化学計算におけるスケーリング則の理論的要件:Size Consistency, Extensivity, and Variational Principle

last_modified: 2026-01-21

1. 概要 (Overview)#

本ドキュメントは、量子化学計算手法の信頼性を評価するための物理的・数学的要件である「大きさについての無矛盾性 (Size Consistency)」、「大きさについての示量性 (Size Extensivity)」、および「変分原理 (Variational Principle)」について定義し、各計算手法の適合性を規定するものである。

2. 定義 (Definitions)#

2.1 大きさについての無矛盾性 (Size Consistency)#

J.A. Popleによって提唱された、解離極限におけるエネルギーの加法性に関する要件。

  • 定義: 相互作用のない(無限遠に離れた)2つの系 AA および BB の複合系 ABAB のエネルギー EABE_{AB} が、それぞれの単体エネルギーの和に一致すること。 limRABEAB=EA+EB\lim_{R_{AB} \to \infty} E_{AB} = E_A + E_B
  • 重要性: 化学反応に伴うエネルギー変化(解離エネルギー等)を算出する際、反応系と生成系でエネルギーの基準が保存されるために必須となる。

充足時の効用 (Utility of Compliance)#

  • 反応エネルギーの保存: 反応物と生成物を個別に計算した場合と、超分子として計算した場合のエネルギー差が消失するため、反応熱(ΔH\Delta H)や活性化エネルギーを一貫した基準で算出可能となる。
  • ポテンシャル曲面の連続性: 結合解離過程において、平衡構造から解離極限に至るまでポテンシャルエネルギー曲面(PES)が滑らかに記述される。

欠落時の弊害 (Consequences of Deficiency)#

  • 解離極限での破綻: 分子が解離してフラグメント間の距離が無限大 (RR \to \infty) になった際、計算されるエネルギーがフラグメント個別のエネルギー総和と一致しない。
  • 結合エネルギーの誤差: 上記の不一致により、結合解離エネルギー(BDE)の算出値に、電子状態理論に由来しないアーティファクト(非物理的な誤差)が混入する。

2.2 大きさについての示量性 (Size Extensivity)#

R.J. Bartlettによって提唱された、粒子数に対するエネルギーのスケーリングに関する要件。

  • 定義: 系の全エネルギー EE が、構成粒子数(電子数) NN に対して線形に増大すること。 EN(N)E \propto N \quad (N \to \infty)
  • 重要性: 結晶や巨大分子において、単位粒子あたりの相関エネルギーを正しく記述するために必須となる。この性質が欠如すると、相関エネルギーは NN \to \infty でゼロに収束する。
  • 補足: 閉殻系においてConsistencyとExtensivityはしばしば同等の挙動を示すが、数学的背景(図形的な連結性など)は異なる。

充足時の効用 (Utility of Compliance)#

  • 巨大系への適用妥当性: 構成粒子数 NN が増加しても、単位粒子あたりの相関エネルギー誤差が一定に保たれる。これにより、ポリマー、生体高分子、結晶などの巨大系に対しても、小分子と同等の精度で議論が可能となる。
  • 熱力学的整合性: 内部エネルギーやエンタルピーといった熱力学的な示量変数としての性質と整合し、統計力学的な取り扱いが可能となる。

欠落時の弊害 (Consequences of Deficiency)#

  • サイズ依存的な精度劣化: NN の増加に伴い、相関エネルギーの回収率が N1/2N^{-1/2} のオーダーなどで減衰する。あるサイズ以上では、電子相関の記述が実質的に機能しなくなる(例:大きな分子に対するCISD計算)。
  • 比較可能性の喪失: サイズの異なる系(例:ベンゼンとナフタレン)の間で、計算精度(誤差の割合)が異なるため、安定性や反応性の定量的な比較が無意味となる。

2.3 変分原理 (Variational Principle)#

量子力学の基本原理に基づく、エネルギー値の上界性に関する要件。

  • 定義: 近似波動関数 Ψapprox\Psi_{approx} から得られる期待値エネルギー EapproxE_{approx} は、常に真の基底状態エネルギー EexactE_{exact} 以上であること。 Eapprox=ΨH^ΨΨΨEexactE_{approx} = \frac{\langle \Psi | \hat{H} | \Psi \rangle}{\langle \Psi | \Psi \rangle} \ge E_{exact}
  • 重要性: 計算結果が「真の値より低い(物理的にあり得ない)」値にならないことを保証する。また、基底関数の改善に伴いエネルギーが単調減少(改善)することを保証する。

充足時の効用 (Utility of Compliance)#

  • 解の上界保証: 算出されたエネルギー EcalcE_{calc} が真のエネルギー EexactE_{exact} よりも常に高いことが数学的に保証される。これにより、計算値は真値に対する「近似的な上限」としての物理的意味を持つ。
  • 改善指標の明確化: 基底関数の拡張やパラメータの最適化を行った際、エネルギーが低下すれば「解が改善した」と断定できる。これにより、系統的な精度向上の指針が得られる。

欠落時の弊害 (Consequences of Deficiency)#

  • 過剰評価のリスク: 算出エネルギーが真のエネルギーを下回る(突き抜ける)可能性がある。この場合、偶然真値に近いのか、過剰に相関を見積もっているのかの判別が困難となる。
  • 非単調な収束挙動: 基底関数を大きくしたにもかかわらずエネルギーが上昇する場合があり(振動的な挙動)、計算条件の良し悪しをエネルギー値のみで単純に判断できなくなる。(Post-HF法かつ摂動法であるMPn系に見られる。)

3. 手法別適合性マトリクス (Compliance Matrix)#

各計算手法が上記の要件を満たすか否かの一覧を以下に示す。

MethodSize ConsistentSize ExtensiveVariationalRemarks
Hartree-Fock (HF)YesYesYes電子相関を含まない平均場近似。
Full CIYesYesYes厳密解。計算コストは N!N! で爆発。
Truncated CI (CISD)NoNoYes打ち切りによりConsistency/Extensivityが破綻。変分性は保持。
Coupled Cluster (CCSD)YesYesNo指数関数展開によりConsistency/Extensivityを保持。変分性は喪失。
Perturbation (MPn)YesYesNo次数により振動するため変分性は保証されない。
DFT (Approximate)Yes*YesNo*汎関数に依存するが、一般にExtensive。厳密な意味での変分性は議論あり。

4. 欠陥のメカニズム (Failure Analysis)#

4.1 打ち切りCI法における不整合#

Configuration Interaction (CI) 法では、波動関数を励起配置の線形結合で表現する。 ΨCI=(1+C^1+C^2+)Φ0\Psi_{CI} = (1 + \hat{C}_1 + \hat{C}_2 + \dots) \Phi_0 ここで励起レベルを2 (CISD) で打ち切った場合、独立した2つの系 A,BA, B の積波動関数に含まれる「同時2電子励起項(AAで2励起 ×\times BBで2励起 = 全体で4励起)」が空間から欠落する。 これにより、系が大きくなるほど相関エネルギーの記述不足が NN の平方根オーダーで拡大し (Size Inconsistency)、巨大系では物理的に無意味な結果を与える。

4.2 Coupled Cluster法における解決#

Coupled Cluster (CC) 法では、波動関数をクラスタ演算子の指数関数で表現する。 ΨCC=eT^Φ0=(1+T^+12T^2+)Φ0\Psi_{CC} = e^{\hat{T}} \Phi_0 = (1 + \hat{T} + \frac{1}{2}\hat{T}^2 + \dots) \Phi_0 T^2\hat{T}_2 (2電子励起) までで打ち切った場合でも、テイラー展開の非線形項(12T^22\frac{1}{2}\hat{T}_2^2 など)により、4電子励起などの高次励起が「積の形(非連結項)」として自動的に生成される。 これにより、独立した部分系のエネルギーの単純和が自然に導出され、Size ConsistencyおよびExtensivityが厳密に保証される。ただし、この非線形パラメータ化により、エネルギー期待値の変分評価が困難となり、変分原理は放棄される。

5. 参考文献 (References)#

  1. Pople’s Definition (Size Consistency): Pople, J. A., Binkley, J. S., & Seeger, R. (1976). “Theoretical models incorporating electron correlation”. International Journal of Quantum Chemistry, 10(S10), 1-19.
  2. Bartlett’s Definition (Size Extensivity): Bartlett, R. J. (1981). “Many-Body Perturbation Theory and Coupled Cluster Theory for Electron Correlation in Molecules”. Annual Review of Physical Chemistry, 32, 359-401.
  3. General Textbook: Szabo, A., & Ostlund, N. S. (1996). Modern Quantum Chemistry: Introduction to Advanced Electronic Structure Theory. Dover Publications.

補足#

1. 打ち切りCI (Truncated CI) で Size Consistency が破綻する理由#

この現象の本質は、波動関数の「積の構造」と「打ち切り」の数学的な非互換性にあります。前提:波動関数の乗法性相互作用のない2つの系 AABB が無限遠にある場合、複合系 ABAB の全波動関数 ΨAB\Psi_{AB} は、それぞれの部分系の波動関数 ΨA,ΨB\Psi_A, \Psi_B の積で記述されなければなりません。ΨAB=ΨA×ΨB\Psi_{AB} = \Psi_A \times \Psi_BCISD(一・二電子励起CI)の場合の矛盾系 AA に対してCISD計算を行うと、その波動関数は参照配置 Φ0A\Phi_0^A と、一・二電子励起演算子 C^1A,C^2A\hat{C}_1^A, \hat{C}_2^A を用いて次のように書けます。ΨACISD=(1+C^1A+C^2A)Φ0A\Psi_A^{CISD} = (1 + \hat{C}_1^A + \hat{C}_2^A) \Phi_0^A同様に系 BB も記述されます。ΨBCISD=(1+C^1B+C^2B)Φ0B\Psi_B^{CISD} = (1 + \hat{C}_1^B + \hat{C}_2^B) \Phi_0^Bこれらを掛け合わせた複合系の理想的な波動関数は以下のようになります(展開項の一部を抜粋)。ΨAB=ΨACISD×ΨBCISD=(1+C^1A+C^2A)(1+C^1B+C^2B)Φ0AΦ0B=(1+C^1A+C^1B+C^2A+C^2B+C^2AC^2B+)Φ0AB\begin{aligned} \Psi_{AB} &= \Psi_A^{CISD} \times \Psi_B^{CISD} \\ &= (1 + \hat{C}_1^A + \hat{C}_2^A)(1 + \hat{C}_1^B + \hat{C}_2^B) \Phi_0^A \Phi_0^B \\ &= (1 + \hat{C}_1^A + \hat{C}_1^B + \hat{C}_2^A + \hat{C}_2^B + \underline{\hat{C}_2^A \hat{C}_2^B} + \dots) \Phi_0^{AB} \end{aligned}ここで問題となるのが下線部のクロス項 C^2AC^2B\hat{C}_2^A \hat{C}_2^B です。物理的意味: 系 AA で二重励起、かつ系 BB で二重励起が起きている状態。複合系全体での扱い: 系 ABAB 全体から見れば、これは「四重励起(Quadruple Excitation)」に相当します。しかし、複合系 ABAB に対して通常のCISD計算を行うと、定義上「全体での二重励起」までしか空間に含まれません。したがって、積波動関数に必須であるはずの C^2AC^2B\hat{C}_2^A \hat{C}_2^B 項(四重励起項)が空間から欠落します。この項の欠落により、ΨABCISDΨACISD×ΨBCISD\Psi_{AB}^{CISD} \neq \Psi_A^{CISD} \times \Psi_B^{CISD} となり、エネルギーの加法性が成立しなくなります。

2. Coupled Cluster (CC) で変分性がなくなる理由#

CC法が変分原理を満たさない(エネルギーが真の値より低くなり得る)主な理由は、エネルギーの決定方法が「期待値の最小化」ではなく「射影(Projection)」に基づいているためです。変分法の困難通常の変分原理に基づくエネルギー式は以下のレイリー商です。E=ΨH^ΨΨΨE = \frac{\langle \Psi | \hat{H} | \Psi \rangle}{\langle \Psi | \Psi \rangle}CC法の波動関数 ΨCC=eT^Φ0\Psi_{CC} = e^{\hat{T}} \Phi_0 をこれに代入すると、分母・分子ともに eT^eT^e^{\hat{T}^\dagger} e^{\hat{T}} という項が現れます。この展開は、CI法のような有限項での打ち切りとは異なり、一般に無限級数となります(Baker-Campbell-Hausdorff展開が有限で止まらない)。

これを厳密に計算することは計算コスト的に極めて困難です。射影による解法 (Projected Schrödinger Equation)計算を実用的なコスト(多項式オーダー)に収めるため、標準的なCC法ではシュレーディンガー方程式 H^eT^Φ0=EeT^Φ0\hat{H} e^{\hat{T}} \Phi_0 = E e^{\hat{T}} \Phi_0 に対し、左から eT^e^{-\hat{T}} を掛けて相似変換し、参照配置 Φ0\Phi_0 および励起配置 Φμ\Phi_\mu に射影して解を求めます。

エネルギー方程式: Φ0eT^H^eT^Φ0=E\langle \Phi_0 | e^{-\hat{T}} \hat{H} e^{\hat{T}} | \Phi_0 \rangle = E

振幅決定方程式: ΦμeT^H^eT^Φ0=0\langle \Phi_\mu | e^{-\hat{T}} \hat{H} e^{\hat{T}} | \Phi_0 \rangle = 0

このアプローチは、相似変換されたハミルトニアン Hˉ=eT^H^eT^\bar{H} = e^{-\hat{T}} \hat{H} e^{\hat{T}} の固有値問題を解くことと等価です。しかし、Hˉ\bar{H} は非エルミート行列となるため、その固有値(エネルギー)は変分原理による「真のエネルギーに対する上界性」を数学的に保証しません。したがって、基底関数が不十分な場合や多参照性が強い場合などにおいて、CC法のエネルギーは真の値を下回る(オーバーシュートする)可能性があります。

非エルミート行列(非エルミート演算子)において変分原理(エネルギーの上界性)が保証されない理由#

数学的には**「レイリー商(Rayleigh Quotient)が固有値の加重平均として表現できない(あるいは重みが正の実数にならない)」**点に帰着します。以下に、エルミートの場合と比較しながら、その数理的メカニズムを解説します。

1. エルミート行列における上界性の証明(前提)#

変分原理 EapproxE0E_{approx} \ge E_{0} が成立するためには、ハミルトニアン HH がエルミート(H=HH^\dagger = H)であることが不可欠です。

完全系展開: エルミート行列の固有ベクトル ψi|\psi_i\rangle は完全正規直交系をなし、任意の試行関数 Ψ|\Psi\rangle を展開できます(Ψ=iciψi|\Psi\rangle = \sum_i c_i |\psi_i\rangle)。

実数固有値: 固有値 EiE_i はすべて実数であり、E0E1E_0 \le E_1 \le \dots と順序付けできます。

レイリー商の性質:エネルギー期待値(レイリー商)は以下のように記述されます。E[Ψ]=ΨHΨΨΨ=ici2Eiici2E[\Psi] = \frac{\langle \Psi | H | \Psi \rangle}{\langle \Psi | \Psi \rangle} = \frac{\sum_i |c_i|^2 E_i}{\sum_i |c_i|^2}ここで重み ci2|c_i|^2 は必ず正の実数です。したがって、E[Ψ]E[\Psi] は固有値 EiE_i の凸結合(重み付き平均)となり、その値は最小固有値 E0E_0 を決して下回ることができません。

2. 非エルミート行列における破綻のロジック#

Coupled Cluster (CC) 法における有効ハミルトニアン Hˉ=eTHeT\bar{H} = e^{-T} H e^{T} は非エルミートです(HˉHˉ\bar{H}^\dagger \neq \bar{H})。これを射影して解くプロセスでは、上記のロジックが以下の点で崩壊します。

A. 最小化ではなく「停留点」探索である

CC法では、エネルギー汎関数の最小化を行っているのではなく、非対称な射影方程式(連立方程式)の解を求めています。数理的には、以下の双変分汎関数 (Bivariational Functional) の停留点(Stationary Point)を求めていることに相当します。E(Ψ~,Ψ)=Ψ~HˉΨΨ~ΨE(\langle \tilde{\Psi}|, |\Psi\rangle) = \frac{\langle \tilde{\Psi} | \bar{H} | \Psi \rangle}{\langle \tilde{\Psi} | \Psi \rangle}ここで、左固有ベクトル Ψ~\langle \tilde{\Psi}| と右固有ベクトル Ψ|\Psi\rangle は互いに独立に変動します。この汎関数の停留点は、極小値(谷の底)である保証はなく、**鞍点(Saddle Point)**である可能性があります。鞍点のエネルギー値には、真の基底状態エネルギーに対する上下の制約が存在しません。

B. 固有値展開による不等式の不成立

仮に非エルミート行列 Hˉ\bar{H} の右固有ベクトル Ri|R_i\rangle で試行関数を展開できたとしても、対応する左固有ベクトル Li\langle L_i| との関係(双直交性 LiRj=δij\langle L_i | R_j \rangle = \delta_{ij})を用いると、エネルギー期待値のような量は以下の形になります。E=i(liri)EiE = \sum_i (l_i^* r_i) E_iここで係数の積 liril_i^* r_i は、エルミートの場合の ci2|c_i|^2 とは異なり、正の実数である保証がありません(負や複素数になり得る)。「重み」が負になり得るため、平均値が最小値 E0E_0 よりも小さくなる(マイナス方向へ突き抜ける)ことが数学的に許容されてしまいます。

3. 具体的な物理的イメージ#

変分法(エルミート):放物線の「底」を探す作業です。どれだけ探索が不十分でも、放物線の上にいる限り、底(真の解)より下に行くことは幾何学的にあり得ません。

CC法(非エルミート・射影法):曲線と直線の「交点」を探す作業(求根アルゴリズム)に近いです。近似曲線が真の解の曲線と交わる点は、真のエネルギー値より上になることもあれば、下になることもあります。

結論#

非エルミート行列を用いる手法において変分原理が保証されないのは、**「エネルギー評価値が、正の確率重みを持つ固有値の平均として記述できないため、最小固有値による下限の制約を受けない」**という数学的性質によるものです。

量子化学計算におけるスケーリング則の理論的要件:Size Consistency, Extensivity, and Variational Principle
https://ss0832.github.io/posts/20260121_self_consistence/
Author
ss0832
Published at
2026-01-21
License
CC BY-NC-SA 4.0

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